掲載開始日:2025年3月25日更新日:2025年3月25日
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美郷町では、昭和41年まで日本酒「いすゞ美人」が製造されていました。
令和7年2月、「いすゞ美人」が約60年ぶりに復活。
今回は、美郷町民待望の復活を遂げた日本酒「いすゞ美人」について紹介します。
昭和30年から41年までの約11年間、美郷町にある甲斐酒造で製造されていました。
「いすゞ美人」の名前は、甲斐酒造に嫁いだお嫁さんがとっても美人であったことから名付けられたのではないかと言われています。
町民に親しまれていた「いすゞ美人」でしたが、昭和43年、国が酒造の合併を進める施策をとり、甲斐酒造が大分県の酒造会社と合併したことから、「いすゞ美人」の販売は終了しました。
「いすゞ美人」復活のきっかけは、美郷町の田中町長と美郷町商工会の渡會さんの会話が始まり。
度会さんは、元々鹿児島県の出身ですが、娘さんが住む美郷町に移住してきました。娘さんの義父と話していた時に、「いすゞ美人」という日本酒があったという話を聞きます。
「今や幻となった『いすゞ美人』を飲んでみたい。」、「美郷町の名物を生み出したい。」という思いから、「『いすゞ美人』を復活させられないだろうか。」という話を町長としていたところ、町長にも同じ思いがあることが分かり、復活プロジェクトを企画することとなりました。
令和4年に始動した復活プロジェクトですが、約3年の年月を経て、復活させるという願いを叶えることができました。
60年前のお酒を復活させることには大変な苦労もありました…
日本酒づくりには、まず米が必要となります。
まずは、当時使用されていた米が、どの品種のものなのか調べることから始めました。当時の米の生産状況や聞き取りなどをしたところ、「瑞豊(ずいほう)」という品種の米を使用していたことが分かりました。
「瑞豊」の種子を入手し、苗づくりをし、田植え、稲刈りなどの工程を経て、収穫。
ですが、すべてが順調に進んだわけではありませんでした。
まずは、「瑞豊」の種子を入手。ですが、「瑞豊」の種子の中にも3系統あり、すべての種子で発芽試験を試みることに。並行して昔の文献を探し、当時使用していた種子の特性を調べました。
どの種子を採用するか、試行錯誤しましたが、3系統の種子の中から当時使用していた種子と似た特性を持つ種子を採用することになりました。
ですが、すぐに次の壁にぶつかります。
苗作り、田植えをしましたが、「瑞豊」は、背が高くなる品種であるため、台風や豪雨などで稲が倒れてしまったり、また病気に弱い品種であるという課題が…
実際に大雨が多い時期には、稲が倒れてしまい、酒米作りの大変さを痛感。なんとか苦難を乗り越え、収穫作業までたどり着きましたが、多くの米を収穫することは今後も難しいのかもしれないと課題は残りました。
田植えの様子
稲刈りの様子
ここでは、日本酒造りに必要な酵母を採取する作業について紹介します。甲斐酒店の酒蔵で、木樽の中や柱など、いろいろな場所をこすりながら、酵母を採取。
ですが、ここでも壁にぶつかります。
初めに採取した酵母が当時使用していた酵母と同じかどうか遺伝子検査をしたところ、不一致という結果が。
この結果から、採取した酵母が蔵付き酵母であったから、不一致だったのではないかという話があがりました。
蔵付き酵母とは、酒蔵の建物や壁、樽などに自生している酵母のこと。その蔵独自の酵母であるため、市販の酵母(当時使用していたものと同じ種類の酵母)と遺伝子検査をしても不一致という結果に納得がいきました。
当時の「いすゞ美人」に近づけるためには、蔵付き酵母を使用した方が良いということとなり、採取した酵母を培養し、酒母づくりに移りました。
木樽から酵母を採取する様子
原材料がそろったら、日本酒のもととなる酒母づくり。酒母とは、蒸米、酵母、麹、井戸水を混ぜ合わせて作ります。井戸水は、甲斐酒店で今も活用されている井戸水を使用し、再現性を高めることに力を入れました。
ここでできた酒母と蒸米、麹、水を加えたものを発酵させてもろみを作ります。このもろみがやがて原酒となります。
製造に関しては、千徳酒造株式会社(延岡市)に協力いただき、ついに「いすゞ美人」が復活を遂げました。
もろみづくりの様子
初搾りの際の様子
今回は、1500本製造し、宇納間地蔵大祭が開催された2月20日から販売を開始しました。
令和7年3月現在、すべて完売。
宇納間地蔵大祭で販売した際には、早朝3時から販売開始を待つ方もいるほど、あっという間に完売。
町内だけでなく、町外からも「いすゞ美人」の販売について問い合わせがあるなど、多くの方が待ち望む商品となっています。
味の特徴はというと、キレがあり、香りがフルーティー。飲みやすく、老若男女どなたでもお楽しみいただける味になっています。
多くの町民が関わって完成した商品なので、町民の喜びもひとしお。
最終目標は、毎年2月~3月に開催される宇納間地蔵大祭のお土産品として定着させること。
令和7年度からは、ふるさと納税の返礼品にもなる予定。
そして、令和7年度以降もいすゞ美人の製造を行う予定となっています。
美郷町で約60年ぶりに復活した「いすゞ美人」。
大仕事を成し遂げた裏には、大変な苦労もありました。ですが、その分、喜びも計り知れないほど大きなものだったと思います。
販売開始すると、すぐに完売という想定以上の人気を博している「いすゞ美人」。
「美郷町といえば、『いすゞ美人』だよね。」と多くの方が話す未来はすぐ近くかもしれません。
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