契約
1.新築住宅を取得する方法
- 新築住宅を入手したい場合、契約形態と契約相手は下表のようになります。
- 建売契約と紛らわしいのが下表の「イ.建築条件付き土地売買契約」です。これは不動産会社が土地を売る際、不動産業会社との関係のある特定の施工業者(土地の売主の会社、売主が出資する子会社など)と買い主が建築請負契約を締結することとなります。この場合は、設計や工事に第三者のチェックはありませんので、購入する本人が住宅関連の情報を収集、勉強し、チェックする必要があります。
- 住宅を建てる場合は、1設計は建築士事務所、工事は工務店に分けて依頼する方法、2設計と工事を住宅メーカーや工務店に依頼する方法があり、契約はそれぞれ別々に締結します。
- 下表の「オ.設計、工事分離型」は、建築主は要望を設計に反映しやすく、見積り合わせ又は入札による施工業者選びも可能です。
建築士事務所は、工事中に設計図通り施工されているかを確認し、建築主に報告します。建築士が適切な監視業務を行うため、施工業者とのトラブルは比較的起きにくい方法です。
契約形態 |
契約を結ぶ相手 |
ア.土地付建物売買契約(建売り住宅の場合) |
不動産業会社、開発デベロッパー |
イ.建築条件付き土地売買契約
(特定の施工業者との建築請負が条件となる土地の購入) |
不動産会社、開発デベロッパー |
ウ.区分所有建物売買契約(分譲マンションの購入) |
不動産会社、開発デベロッパー |
エ.一括請負契約
(設計監理と建築工事との住宅メーカや施工業者に一括発注) |
住宅メーカー、工務店などの施工業者 |
オ.分離請負契約
(設計監理は建築士事務所、工事は施工業者と分離で発注) |
建築士事務所(設計監理業務委託契約)
工務店(請負契約) |
2.持家を建てる場合の発注方法
- 上記の表のエとオにあてはまるもので、以下のような点に配慮することが望まれます。
- 住宅の発注方法は、一般的に下記の3通りがあります。
a.建築士事務所登録を受けた建築士事務所に設計と監理を依頼し、工事は工務店に発注
b.住宅メーカーに一括発注
c.建築士事務所登録を受けた工務店や大工さんに設計から工事、監理まで一括発注。
それぞれメリット・デメリットがあります。
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- 一般に工事監理を第3者の立場で行なってくれるという点では設計・監理と工事とは別の方が望ましいのですが、設計・監理から工事までを一貫して行う信頼のある工務店に依頼する方法もあります。なお、設計・監理の費用は、工事費とは別に必要となります。
- どの発注形態を選択するにしても、建築士事務所や工務店等が携わった住宅を見せてもらいましょう。さらに、その住宅の居住者からも話を聞く機会を設けてもらうと良いでしょう。
- 設計・監理と工事とを別発注する場合、住み始めてからの修理などを頼む窓口をどちらにするのかをあらかじめ決めておくことが良いでしょう。
- また、契約を行う際には、事前に数社の見積りをとって比較検討することが望ましいです。
3.建築士事務所及び工事業者との契約のポイント
建築士事務所との契約
- 設計を建築士事務所に依頼する場合、建築士事務所との契約手続きが必要となります。
- 必ず契約内容を明らかにした、書面による契約を行いましょう。口約束は後で問題になることが多いです。
- 設計契約時は建築士免許の提示、重要事項説明が義務づけられます。(平成20年12月以降)
- 住宅の建築には、建て主による建築確認申請手続きが必要ですが、建築士事務所へ「建築確認申請の代行業務」をお願いすることができます。その場合は、代行業務の契約を締結します。
- 通常、建築士事務所との契約は、設計業務だけではなく、施工業者との間に立って、図面通りに工事が行われていることや仕様書通りの材料が使われていることなどを確認する監理業務までを含めることが望まれます。
- 設計料や監理業務料の支払い方法、支払時期などを契約書に明記する必要があります。
施工業者との契約(設計・監理から工事までの一括発注)
- 設計・監理と工事とは別々に契約する必要があります。
- 設計契約時は建築士免許の提示、重要事項説明が義務づけられます。(平成20年12月以降)
- 設計が固まり、見積りも納得できれば、設計案をもとに「建築確認申請書」を作成し、行政や民間の確認検査機関へ提出します。
- 建築確認済証を受け取った後に、工事の契約をすることが望まれます。設計上のミスや手違いが生じた場合は、契約は延期し、設計変更後、再度「建築確認申請書」を提出し、その後に契約となります。
- 設計、工事業者側に起因する大きな設計変更や工事内容の変更があった場合は、契約破棄ということも考えられます。
契約書のポイント
- 通常は、建築確認済証受領後に、依頼する工務店と「工事請負契約」を取り交わします。工事請負契約には一般的に次のような内容を記入し、必要な設計図書等を添付します。
- 発注者の氏名、請負者の氏名、工事内容と工事場所、完成引き渡し日
- 工事請負代金の額と支払い方法と支払い時期
- 引渡し遅延の場合の措置
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- 契約書は重要な書類なので、内容を十分確かめて契約しましょう。
- 契約書以外に契約約款(工事の詳細な手順等を明記したもの)、設計図書、仕様書、見積り書を確認してください。
- 見積書の内容が希望に沿ったものか、曖昧な部分が含まれていないか必ず確認しましょう。不明な場合は第三者の建築士などに内容を見てもらうのも方法の一つです。
→「業者選択のポイント」へ
- 追加工事や手直し工事についても、追加工事金の支払いの条件を契約書に明記しておきましょう。
- 工事の遅延などはトラブルの原因となりやすいので、工事期間を契約書に明記しておきましょう。
- 手直し工事が生じた場合には、手直し工事が終了してから引渡しを受けましょう。
- 完成期日までに設計どおりの住宅ができない場合は、工事の超過日数につき契約に基づく遅延損害金を請求できます。
標準的な工事請負契約の様式
4.リフォームの場合の契約のポイント
- どんな小さな工事でも契約書を交わしましょう。契約書を交わしてないため、トラブルになってしまう例が少なくありません。
- 契約書では、特に工事内容、工事金額、支払方法、工期、引き渡し期日、保証の内容、契約解除の条件を理解しておくことが重要です。支払方法について、工事契約の内金については、特に決まっておらず、施主と施工業者の間で決めることになります。
- 契約書以外に契約約款(工事中や建物完成及び引き渡し後にトラブルが生じた場合の解決方法などを取り決めた書類)、設計図書、仕様書、見積り書を確認してください。
5.中古住宅購入の場合の契約のポイント
- 中古住宅における売買契約時のチェックポイントは次のようなことがあげられます。
- 契約時の当日に内容を理解するのは時間もかかりますので、数日前に仲介している不動産会社から「重要事項説明書」や「契約書」のコピーを送ってもらい、読んでおくのが良いでしょう。
- 重要事項説明書の受領書に押印しても、契約にはなりませんので、落ち着いて内容を確認しましょう。
- 重要事項説明書をみる主なポイントは下記のようなことです。
- 「物件の表示」
→記述にあやまりがないかどうか。
- 「法令上の制限」
→物件のある地域の建ぺい率、容積率などを記載しています。現在の建物はどの程度増築又は改築が可能なのか等を確認しましょう。また、建築確認済証や完了検査済証、各種法令等に基づく許可証等の有無を確認しておきましょう。
- 「登記事項説明書に記載された事項」
→土地・建物の所有者と住まいの売り主は同じか、土地や建物に抵当権などがついている場合は、引き渡しまでに除外できるかどうかを確認します。
- 「道路のこと」
→接している道路の管理主体(公道なのか私道なのか)などを調べ、再建築が可能かどうかも確認しましょう。
私道の場合は持ち分負担が必要となりますので、十分確認しましょう。
- 「水道・電気・ガス・下水道のこと」
→水道や下水道が近くまできていないと、引き込み費用に別途負担金がかかります。
- 「契約の解除に関する事項」
→万一のことを考えて、宅地建物取引主任者に確認しておきましょう。など
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不動産会社との契約についての詳細
6.賃貸住宅の契約のポイント
申込み、契約しましょう。
- 申込書をもとに入居審査や家主の確認と承諾が得られれば、契約となります。
- 賃貸住宅の契約上のポイントは下記のとおりです。
- 家賃の額、支払い、滞納時のルール
滞納金記載があった場合は、その金額の確認が必要です。
- 更新、退去予告の取り決め
契約を更新して住み続ける場合は、別途更新料や更新手数料が必要な場合もあります。
退去の場合には、退去の予定をいつまでに連絡するかをチェックしておきましょう。
- 原状回復の範囲と内容
退去後、どこまで入居前の状態に戻すのか、どの部分まで入居者が敷金のうちから負担するのかを確認しておくことが大切です。
負担割合が不明確な場合や、全額入居者負担などの場合はトラブルの原因となりますので、事前に文書で契約内容を明確にしておくことが大切です。
- 禁止事項の内容
アパートによってはペットの飼育、楽器演奏、ストーブ使用などの禁止事項がありますので、チェックしておきましょう。
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家賃保証会社について
- 最近では、家賃保証会社と提携している不動産事務所もありますので、チェックしておきましょう。
- 家賃保証会社とは、入居者の勝手な退去や家賃滞納などに備えて家主に家賃保証することを主に業務としている会社です。
- 入居者は保証会社に一定の金額を支払いますが、保証人を立てなくてもよく、また、通常の保証料や敷金などよりも安価になるため、入居者にとってメリットがあります。
- 面倒な家賃支払い交渉や無断退去後の残留物処理費用など保証されているため、家主にとってもメリットがあります。
- 保証人なしの場合、保証料は高くなりますので、確認しておきましょう。
- また、家賃保証料と原状回復保証料を支払うことで借り主の故意の過失や損耗や毀損に備えることができます。
不動産会社との契約についての詳細
クーリングオフとは
一定期間、無条件で申込みの撤回または契約の解除ができる制度です。
消費者が自宅訪問やキャッチセールスなど、契約条件を充分に検討しないで契約してしまうことがあるため、再度、消費者に考え直す機会を与えるために導入された制度です。
一定の期間内の場合、違約金などの請求を受けることなく、申込みの撤回や契約解除ができます。
クーリングオフの期間
商品、販売方法、契約等の種類で、その期間は異なりますが、宅地建物取引業では宅建業者が売主で、事業所等以外で行なった申込や契約に限り、契約書面受領日から8日間となっています。
クーリングオフに関する注意事項
口頭でなく、必ず書面で行うこと。葉書を投函するだけでも効力は発生しますが、できるだけ証拠が残る「配達証明郵便」や「内容証明郵便」が確実です。
クーリングオフ期間中に相手に到着しなくても、クーリングオフ期間中に書面を発送すれば有効です。
クーリングオフ妨害(不実な告知による誤認、または脅迫)があった場合、妨害がなくなり「クーリングオフ妨害解消のための書面」を受領するまでは、いつまでもクーリングオフ期間は進行しないことになっています。
クーリングオフの実際のやり方がわからない場合、消費生活センターに問い合わせください。
クーリングオフの詳細
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