掲載開始日:2004年11月25日更新日:2004年11月25日

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答申第15号

平成16年11月18日付けの「○○○○年○月~○月、入院していた○○○○本人を医療保護入院とすることの保護義務者の同意書を添えて、当時の○○○病院(精神科)管理者から保健所長を経て県知事へ届出されたり、更に報告されたりした文書」についての開示請求に対して、平成16年11月25日付けで宮崎県知事(以下「実施機関」という。)が行なった個人情報不開示決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。

1審議会の結論

審議会の結論

2異議申立ての内容

異議申立人が異議申立書、意見書及び平成16年宮崎県条例第2号による改正前の宮崎県個人情報保護条例(平成14年宮崎県条例第41号。以下「旧条例」という。)に規定する宮崎県個人情報保護審査会(以下「審査会」という。)における口頭意見陳述で主張している内容を要約すると、おおむね次のとおりである。

  • (1)当時の入院は同意に基づく任意入院であったにもかかわらず、退院制限が行われており、当時の入院が医療保護入院でなく、任意入院としていることについては、不適法な状態が生じていたと考えられる。
  • (2)自分の疾病や精神障害名が判定や審査に基づいていないとすると、入院継続の過程における非確定的な情報と言わざるを得ない。確定的であったとすると、医療保護入院としていないのは不適法であり、その段階で病院の管理者などに保護者選任の代理義務が生じていたと考える。
  • (3)当時の入院は事実上の措置入院であり、処分があったのではないかと危惧されるが、強制執行を含む行政命令が出ていたとすると、関連医事情報も含め行政文書化されていないことは、明らかに適法ではない。
  • (4)精神障害としての診断書を学校機関に提出したことがあり、その情報が学籍上の休学や退籍事由とされたこと。同意による任意入院とはいえ、投薬により意識朦朧とした時期があり責任能力の低下は免れなかった上、閉鎖棟や隔離的な条件を考慮すると事実上の措置であったこと。精神分裂病としての判定や確定診断とする知見が依然存在すること。以上のことから、正確な情報確認と申請、請求の必要が生じている。

3異議申立てに対する実施機関の説明要旨

実施機関が個人情報不開示決定処分理由説明書で説明している本件決定の理由の要旨は、おおむね次のとおりである。

  • (1)医療保護入院者に係る諸届出は県知事に提出されるが、当該諸公文書の保存期間は、文書取扱規程(平成2年訓令甲第5号)に基づくファイル管理台帳により、「医療保護入院者入院届」は所管する○○保健所では5年、県健康増進課(本件決定時。組織改正により平成17年度から障害福祉課が所管。以下同じ。)では3年、「医療保護入院者退院届」は各々5年と1年、「医療保護入院者定期病状報告書」は同じく5年と1年と定められており、異議申立人が請求している○○○○年○月から○月に係る公文書は、既に保存期間を経過しているものである。
  • (2)また、異議申立てに係る公文書について、県健康増進課及び○○保健所を調査した結果、その存在は確認できなかった。
  • (3)なお、今回の異議申立人から提出された異議申立書添付書類の「任意入院同意書」、「入院診療録」等によると、当該期間の入院形態は、任意入院とされている。
  • (4)以上の理由により、異議申立てに係る対象個人情報を保有していない。

4審議の経過

当審議会は、本件異議申立てについて、以下のように審議を行なった。

平成16年12月15日 諮問を受けた。
平成17年1月14日 実施機関から本件決定に係る「個人情報不開示決定処分理由説明書」を受け取った。
平成17年1月26日 諮問の審議を行なった。
平成17年2月3日 「個人情報不開示決定処分理由説明書」に対する異議申立人からの「意見書」を受け取った。
平成17年3月4日 諮問の審議を行なった。
平成17年3月18日 異議申立人の口頭意見陳述及び諮問の審議を行なった。
平成17年5月16日 諮問の審議を行なった。

5審議会の判断理由

  • (1)医療保護入院について
    • 医療保護入院は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第123号。以下「法」という。)に規定する精神障害者の入院形態の一つであり、精神保健指定医の診察の結果、医療及び保護のため入院の必要があり、本人に病識がない等入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態であると判定された場合に、保護者の同意があるときは、本人の同意がなくても精神病院に入院させることができるものである。
    • 精神病院の管理者は、精神障害者に対し医療保護入院の措置をとった場合、10日以内に、「医療保護入院者入院届」に医療保護入院について同意をした保護者の同意書を添えて、最寄りの保健所長を経由して県知事に届け出なければならないとされている(法第33条第4項)。
    • ウまた、精神病院の管理者は、医療保護入院者を退院させたときは、10日以内に、「医療保護入院者退院届」を最寄りの保健所長を経由して県知事に届け出なければならないとされている(法第33条の2)。
    • また、精神病院の管理者は、医療保護入院後12ヶ月ごとに、最寄りの保健所長を経由して県知事へ「医療保護入院者定期病状報告書」の提出が義務付けられている(法第38条の2、同法施行規則第20条)。
    • なお、精神病院の管理者は、医療保護入院の措置をとった場合は、その精神障害者に対し、その旨を書面により告知しなければならないが、この告知により症状の悪化が予見される場合などは、告知を行わず、診療録に必要事項を記載することとされている(法第33条の3、同法施行規則第15条)。
  • (2)本件対象個人情報について
    • 本件異議申立てに係る対象個人情報は、異議申立人に係る個人情報が記録された上記(1)イ、ウ、エ記載の「医療保護入院者入院届」及び保護者の同意書、「医療保護入院者退院届」及び「医療保護入院者定期病状報告書」(以下「本件公文書」という。)である。
  • (3)条例第20条第2項の趣旨について
    • 条例第20条第2項は、「実施機関は、開示請求に係る個人情報の全部を開示しないとき(前条の規定により開示請求を拒否するとき、及び開示請求に係る個人情報を保有していないときを含む。)は、開示をしない旨の決定をし、開示請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない。」と規定している。
    • この中で「開示請求に係る個人情報を保有していないとき」とは、開示請求により特定されるべき個人情報が記録された公文書を作成し、又は取得したことがない場合や、作成又は取得したが保存期間が経過したことにより既に廃棄した場合などをいうと解される。
  • (4)審議会の判断
    • 実施機関は処分理由説明書において、本件公文書については、本件決定時には既に保存期間を経過していたこともあり、その存在は確認できなかったと主張している。
    • 本件公文書については、その存在を明確に示す資料は確認できなかったため、保存期間経過前に本件公文書が存在したかどうかは不明であるが、少なくとも、本件決定時には既に保存期間は経過していたことが認められ、なおかつ、実施機関が県健康増進課及び○○保健所を調査した結果、本件公文書の存在は確認できなかったとのことであり、これらのことから判断すると、本件公文書を保有していないという実施機関の主張に不合理な点は認められない。
    • なお、今回の異議申立てに当たり異議申立人から提出された、異議申立人本人の「任意入院同意書」、「入院診療録」等によると、当時の入院形態は任意入院とされており、少なくとも異議申立人から提出を受けた資料からは、異議申立人の当時の入院が医療保護入院であったとは確認できない。
    • 以上の理由から、実施機関が本件公文書を不存在であるとしたことについては、相当の理由があり、不開示決定は妥当であると判断する。

6異議申立人のその他の主張について

当審議会は、平成16年宮崎県条例第2号による改正後の宮崎県個人情報保護条例(平成14年宮崎県条例第41号)第46条第1項第2号の規定に基づき、実施機関より諮問を受けた本件決定の妥当性について審議する機関であり、異議申立人が異議申立書、意見書及び審査会における口頭意見陳述で主張している、異議申立人の当時の入院形態の適法性の有無など、本件決定に関すること以外の主張については、判断する立場にないものである。

よって、「1審議会の結論」のとおり判断する。

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