掲載開始日:2012年10月26日更新日:2012年10月26日

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答申第36号

1審議会の結論

平成24年6月6日付けの「私の父○○○○の被ばく者健康手帳交付申請書および添付書類一式」についての開示請求(以下「本件請求」という。)に対して、平成24年6月14日付けで宮崎県知事(以下「実施機関」という。)が行なった保有個人情報部分開示決定(以下「本件決定」という。)は、妥当である。

2異議申立ての内容

  • (1)異議申立ての趣旨
    異議申立人の異議申立ての趣旨は、本件決定を取り消し、証明人2名の氏名と住所の開示を求めるというものである。
  • (2)異議申立ての理由
    異議申立人が、異議申立書及び意見書で主張している異議申立ての理由は、おおむね次のとおりである。
    • 異議申立人の父は被爆当時16歳であったが、被爆により職場を失い、宮崎に帰郷した。被爆後40年目に仕事が困難な状況となり、被爆者健康手帳を取得することとした。被爆の証明人2名が必要であったため、父が苦労して探し当て、被爆者健康手帳を取得することができた。
    • 証明人2名の被爆感情を考慮した上で、父の被爆の実態を確認した上で、父に代わって深く感謝したいだけの気持ちであり、故意に2名の個人情報を悪用することは考えていない。
    • 不服申立ての結果、開示される際には、証明人2名や親族の気持ちを考慮し、応じることができるまで待ちたい。
    • 証明人2名の氏名及び住所は、異議申立人の父が知っていたことであり、異議申立人が当然知っていて然るべき内容であるが、父の度重なる入退院や被爆感情から異議申立人に伝える機会を逸したものと思われる。
    • 宮崎県個人情報保護条例(平成14年宮崎県条例第41号)(以下「条例」という。)によって、証明人2名の情報を異議申立人に隠すことは、異議申立人の基本的人権に対する侵害行為である。
    • 被爆の実態を詳細に残した資料の調査・収集は、後世の一般の人々に被爆の真相を継承し、二度とこのような惨禍を起こさないための事実証拠として貴重であり、公益に資するもので、活かされるべきものである。このような事実証拠の調査・収集・活用のため、異議申立人の父の被爆状況をよく知っている2名の証明人の存在に信憑性の確保が必要である。証明人2名の住所・氏名が不開示とされることは、異議申立人のみならず、その他一般の人々が原爆の真相を得る手がかりとなる手段を失い、かつ、被爆の証明の信憑性を著しく薄めるものである。

3異議申立てに対する実施機関の説明要旨

実施機関が保有個人情報部分開示決定処分理由説明書で説明している本件決定の理由の要旨は、おおむね次のとおりである。

  • (1)対象保有個人情報
    異議申立人の父である○○○○の被爆者健康手帳交付申請書及び添付書類一式
  • (2)本件決定の理由
    • ア不開示とした部分
      不開示とした部分は、添付書類の下記の部分である。
      • (ア)「居所証明書」に記載された証明人2名の住所、氏名及び印影並びに異議申立人の父の「投下された当時の住所」(家主の氏名の記載含む。)
      • (イ)「原爆被爆状況申立書」に記載された異議申立人の父の「当時の住所」(家主の氏名の記載含む。)
      • (ウ)「原爆被爆証明書」に記載された証明人の「被爆者健康手帳の記号・番号」並びに住所、氏名、印影及び生年月日
    • イ不開示とした理由
      不開示とした部分には、特定の個人名、住所等が記載されており、条例第17条第2号に規定する「開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの」に該当し、ただし書に掲げる情報のいずれにも該当しないと判断した。
  • (3)異議申立人による異議申立ての理由に対する意見
    • 異議申立人は、「2名の証人の被爆感情を考慮した上で、父の被爆の実態を知り、確認した上で、父に代わり、深く感謝申し上げたいだけの気持ちであり、故意に個人情報を悪用することは全く考えていない。」と主張しているが、本件決定は条例に基づき特定の個人を識別することができる情報と判断したものであり、異議申立人が情報を取得した後の主観的意図を考慮して判断するものではない。
    • 異議申立人は、「2名の証人や親族の気持ちを考慮し、不服申立てによる開示の際には、応じることができるまで開示を待ちたい。」と主張しているが、本件決定は、条例の規定により開示の可否を決定するものであって、相手の気持ちを考慮して判断するものではない。
    • 異議申立人は、「2名の証人の氏名及び住所は、父が知っていたことであり、異議申立人が当然知っていて然るべき内容である。」と主張しているが、異議申立人の父が生前知っていたことであっても、亡くなっている現状においては、異議申立人が当然知っていて然るべき内容であるとまでは言えない。
    • 異議申立人は、「2名の証人の情報をいたずらに条例によって異議申立人に隠すことは、基本的人権に対する侵害行為であると考える。」と主張しているが、本件決定は、条例の規定に基づき、適正に処理した結果である。

4審議の経過

当審議会は、本件異議申立てについて、以下のように審議を行なった。

年月日 審議の経過
平成24年6月28日 諮問を受けた。
平成24年7月24日 実施機関から本件決定に係る「保有個人情報部分開示決定処分理由説明書」を受け取った。
平成24年8月22日 「保有個人情報部分開示決定処分処分理由説明書」に対する異議申立人からの「意見書」を受け取った。
平成24年9月5日 諮問の審議を行なった。
平成24年10月9日 諮問の審議を行なった。

5審議会の判断理由

  • (1)本件請求について
    本件請求は、異議申立人が亡くなった父親に関する保有個人情報について開示を求めたものである。
    死者に係る保有個人情報については、「個人情報保護事務の手引」条例第15条(開示請求権)の【運用】において、次のとおり記載されている。「死者に係る保有個人情報は原則として開示請求の対象とならない。ただし、死者である被相続人から相続した財産や不法行為による損害賠償請求権等に関する情報など、死者に係る保有個人情報であると同時に遺族自身の保有個人情報でもあると考えられる場合もあり得るので、事案ごとに慎重に判断する必要がある。」
    本件請求に当たって、実施機関が異議申立人に聴取したところ、最近健康状態が思わしくなく、父親の被爆がその原因と考えており、関係書類の開示を受けた上で、国に対して補償を求めることを検討している、との発言があった。
    これを受けて、自分自身の健康状態の原因を調べるために必要な情報として、亡くなった父親の被爆状況に関する保有個人情報は、遺族である異議申立人自身の保有個人情報でもあると判断し、実施機関において本件請求を開示請求の対象と認めたものである。
  • (2)本件対象保有個人情報について
    異議申立人が異議申立書において開示を求めているのは、証明人2名の氏名と住所であることから、本件異議申立てに係る対象保有個人情報(以下「本件対象保有個人情報」という。)は、実施機関が部分開示決定とした上記3(2)ア記載の「居所証明書」及び「原爆被爆証明書」のうち証明人2名の氏名と住所が記載された部分である。
  • (3)条例の規定について
    条例第17条第2号本文は、「開示請求者以外の個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、開示請求者以外の特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は開示請求者以外の特定の個人を識別することはできないが、開示することにより、なお開示請求者以外の個人の権利利益を害するおそれがあるもの。」を不開示情報として規定している。
    また、同号ただし書は、「ア法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報」、「イ人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」及び「ウ当該個人が公務員等・・・である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び氏名並びに当該職務遂行の内容に係る部分」のいずれかに該当する情報については、同号本文に該当するものであっても開示しなければならない旨を規定している。
  • (4)本件決定の妥当性について
    本件対象保有個人情報に係る部分開示決定の妥当性について検討する。
    不開示とされた証明人2名の氏名及び住所は、異議申立人以外の個人に関する情報であって、条例第17条第2号本文前段の特定の個人を識別することができる情報であると認められる。これらの情報は、異議申立人が知ることができ、又は知ることが予定されたものとする法令の規定又は慣行があるとは認められず、条例第17条第2号ただし書アに該当しない。
    また、人の生命、健康等を保護するために開示することが必要であると認められる情報及び公務員等の職務の遂行の内容に係る情報にも該当しないので、同号ただし書イ及びウにも該当しない。
    したがって、当該氏名及び住所は、条例第17条第2号に規定する不開示情報に該当すると認められるので、不開示としたことは妥当である。
  • (5)異議申立人のその他の主張について
    異議申立人は、異議申立書及び意見書において種々主張するが、異議申立人のその他の主張については、当審議会の判断を左右するものではない。

以上のことから、「1審議会の結論」のとおり判断する。

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